【美術館レポート】大ゴッホ展ー夜のカフェテラス

◆「大ゴッホ展ー夜のカフェテラス」へ行ってきました!

世界中の誰もが知るオランダの画家、Van Gogh(ファン・ゴッホ)。
その知名度は他に類をみない、名前だけでなく画風まで、どんな人の頭の中にもインプットされています。
渦巻く夜空、眩しいほど明るいひまわりなど。
この点については、後にも先にもゴッホを超える人はいないでしょう。

そんなゴッホの《人生で一度は観るべき名画》「夜のカフェテラス」が日本にやってきました。
本展覧会は「Ⅰ・夜のカフェテラス(2025-6年開催)」・「Ⅱ・アルルの羽橋(2028年開催)」の2期構成で、
神戸・福島・東京を巡回します。

「Ⅰ・夜のカフェテラス(2025-6年開催)」では、バルビゾン派の影響を大きく受けた初期の作品に始まり、パリからアルルへ移った際の作品まで一堂に観ることができ、彼の時代とともに変わりゆく作風を楽しめました。

◆人生で一度は観るべき名画「夜のカフェテラス(フォルム広場)」

「夜のカフェテラス」は、ゴッホがパリからアルルへ制作拠点を移動した後に制作されたものです。

日本に強い憧れを持っていたゴッホは、明るく暖かい日差しを求めて、曇り空が多いパリを抜け出し、少しでも日本に近い環境を求めて、フランス・アルルへ移り住みます。

アルルはゴッホにとって最適な場所となり、夜にも関わらずイーゼルにキャンバスを立てて、外で制作を始め、表現や色彩が大胆になっていきました。

その最初の作品が本作、「夜のカフェテラス」なのです。

◆生前一枚も売れなかった!?ゴッホの弟”テオ”の存在

前回のゴッホ展のアートコラムでも詳しく説明させて頂きましたが、ゴッホが〈世界のゴッホ〉になるまでには、弟であったテオの存在が必要不可欠でした。

画商でもあったテオは、兄の作品の魅力を評価し、誰よりも愛していました。

ゴッホは生前に絵が一枚も売れなかったとのエピソードもありますが、その理由の一つに、テオが中途半端な想いでは作品を譲らなかったという点もあります。

ゴッホが亡くなった後、テオも追いかけるかのように亡くなり、その後はテオの奥様が大切に作品を管理しました。そして、テオの息子が受け継ぎ、オランダにゴッホ美術館を建てます。

亡くなった後に、ゴッホが世界のゴッホになったのには、家族の愛と敬意が受け継がれ、後世に大切に引き継がれたからだと断言できます。

今回の展覧会に展示されている「夜のカフェテラス」を率いる名画の数々は、クレラー=ミュラー美術館協力のもと展示されています。

かつては詩人のアルベール・オーリエのコレクションだった作品の数々を、1914年に美術館の創設者のヘレーネ・クレラー=ミュラーが入手しました。

当時、生前よりファン・ゴッホを称賛していたアルベール・オーリエに、兄弟から何点か寄贈されたものです。

大切に受け継がれてきたからこそ、生前ほとんど売れなかったゴッホの絵が、今こうして私たちが実際に美術館で目にすることができるのです。


【関連】:「ゴッホー家族がつないだ画家の夢展」
アートコラム「【美術館レポート】ゴッホ展を観にいってきました!」はこちら>>>

◆身近なものをモチーフに描き続けた理由

ゴッホといえば、椅子や本・花、近所のカフェやレストランの店員などをモチーフに多くを描きました。

常に身近にあるものをモデルに描いている理由の一つに、19世紀の巨匠ジャン=フランソワ・ミレーの存在が大きく影響しています。

「種をまく人」で有名な、バルビゾン派の代表巨匠でもあるミレー。
それまで絵画は貴族のためにあるものとされ、写真がなかった時代の中、写実的で高貴なものや偉人を描くことが主流でした。

しかしミレーが最終的に描いたのは、“農民”
「芸術で、最も私の心を動かすのは何よりも人間的な側面なのだ。」と、今日を生きるために働く、貧しい人たちをモデルに描きました。


特定の人ではなく、農民という人たちを描きたかったミレーは、敢えて表情は詳細に書くことを控えています。

元々牧師でもあったゴッホは、その革新的なミレーのスタイルに共鳴をし、画家になることを決め、身近の人たちをモデルに描き続けました。

また、金銭的にも苦しかったゴッホはモデルを雇うことが難しく、木々や花を多く描いたり、肖像画も多く残しています。

〈世界のゴッホ〉であっても、かつての巨匠から多くの影響を受けて自分のスタイルを確立し、またそのスタイルが次の世代の画家たちへ影響を与えています。

そんなアート史という観点からも、とても興味深い展示会でした。

galleryKASAI/ミレー作品はこちら>>>


◆「大ゴッホ展ー夜のカフェテラス」詳細

「Ⅰ・夜のカフェテラス(2025-6年開催)」

⚫︎神戸/神戸私立博物館
2025年9月20日(土) ~ 2026年2月1日(日)

⚫︎福島/福島県立美術館
2026年2月21日(土) ~ 2026年5月10日(日)

⚫︎東京/上野の森美術館
2026年5月29日(金) ~ 2026年8月12日(水)


「Ⅱ・アルルの羽橋(2028年開催)」

⚫︎神戸/神戸私立博物館
2027年2月6日(土) – 5月30日(日)

⚫︎福島/福島県立美術館
2027年6月19日(土) – 9月26日(日)

⚫︎東京/上野の森美術館
2027年10月 – 2028年1月