【美術館レポート】ルノワール×セザンヌ「モダンを拓いた2人の巨匠」

先日、三菱一号館美術館で開催している「ルノワール×セザンヌーモダンを拓いた2人の巨匠ー」へ行ってきました。

本展は、パリのオランジュリー美術館とオルセー美術館の協力により、
ルノワールとセザンヌ、2人の印象派・ポスト印象派の画家に初めて同時にフォーカスし、企画・監修をした世界巡回展で、ミラノ、マルティニ(スイス)、香港を経て日本へやってきた力のはいった展示会です。

すでに会期は終盤で、9月7日(日)まで開催予定です。
ぜひまだの方は観に行ってみてください。

◆ルノワールとセザンヌについて

職人の息子として生まれ、明るく社交的な性格だったといわれるルノワール
銀行家の家庭に生まれ、人付き合いをあまり好まなかったといわれるセザンヌ
2人は南仏・プロヴァンスの地でともに作品を描き、家族ぐるみの付き合いがあったほど、互いに影響し合いました。
出自や性格だけでなく、一見するとまったく異なる表現を追い求めたように思える2人ですが、古典とモダン両方の様式における先駆者として、近代絵画の巨匠のピカソにも大きく影響を与えています。

◆二人の共通点

そんな二人の巨匠の共通点は、
野外制作に重きを置いていた点です。
光の移り変わりによって生まれる多様な色彩をキャンバスに表現した印象派。

彼らはたとえ同じモチーフだったとしても、アトリエの中の常に同じ光に照らされたものより、太陽の下で光の移り変わりによって表情を変えるものを描きたいという思いが強くありました。

それまでは写実的な作品が絵画の当たり前とされ、サロンでも評価されてきた時代から、描くことの自由を求めて印象派が誕生した。批判を受けながらもその前線で自由を求めて、クロード・モネなどの19世紀後半の作家らと活躍してきた二人ともいえます。

彼らは一瞬ごとに変わる大気の変化や光の遊戯を正面から描き、「風景画」というジャンルを確立するために努めた。
そこには野外制作はなくてはならないものであったのです。

◆豆知識!アート界で名を残す画商:ポール・ギヨーム

また、今回の展示作品の多くは、1920年代のパリで最も重要な画商とも言える、ポール・ギヨームのコレクションです。

ピカソやマティス、モディリアーニなどを世に広めた偉大な画商でありながらも、20世紀初頭のフランス美術の真髄を極める多数の絵画を個人でもコレクションしていました。


私邸を美術館にする構想を果たせぬまま若くして亡くなってしまいましたが、その想いを妻のドメニカ(本名:ジュリエット・ラカーズ)が引き継ぎます。

彼女の2番目の夫、ジャン・ヴァルテル(有名な建築家)の力添えもあり、モネの《睡蓮》をはじめセザンヌ・ルノワールの作品等もコレクションに加えました。

そうしてこれらの作品群は「ジャン・ヴァルテル&ポール・ギヨーム コレクション」としてフランス国家に譲渡され、オランジュリー美術館に展示されるようになりました。

ちなみに、絵画の歴史に名を残す画商となったポール・ギヨームですが、最初は自動車修理工場の従業員でした。

タイヤの取引に使われるゴムの積荷の配達物の中から、たまたまアフリカ彫刻を発見し、その美しさに魅了されてしまいます。資料を収集しその商取引に着手を始めたのがきっかけで、画商という道に辿り着きました。

自分の「好き」から始まった彼にとって、画商という仕事は、ただ絵画を売買するのではなく、「良いものを良い」と正しく伝えていくこと。

写実的な作品しかサロンに入選することができず、新しいものを受け入れようとしなかった業界の中で、彼はいいものを躊躇せずに世に広めることに力を注いだ。

私たち画商があるべき姿であり、そんな彼らが集めてきたコレクションから愛を感じる展示会でした。


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